【外壁アドバイザー】大屋敷竜二
塗装職人歴28年。中学卒業後、塗装業界に入り様々な会社で経験を積む。 塗装以外にも多能工として現在も修業中。
◎主に参加していた有名な現場:TDL・東京タワー・有名宿泊施設・戸建て・マンション等
窯業系サイディングとは?

窯業系(ようぎょうけい)サイディングと急に言われても良くわからないと思います。
しかしながら日本の一般住宅には窯業系サイディングの外壁が6~8割と言われています。
窯業系サイディングの意味や特性を理解できればきっとご自宅にも役に立つと思いますので、専門的な事を踏まえてご説明します。
窯業系サイディングの由来
窯業系サイディングは、セメントや木材繊維などを主原料とした外壁材です。
製造工程で窯の中で高熱処理されることから「窯業系」と呼ばれています。

窯業系サイディングは、1990年代以降の外壁仕上げの主流として約8割のシェアを占めており、戸建住宅などで最も多く使用されています。
その理由は、初期費用が安価に抑えられることや、タイル柄や木目調、レンガ調などさまざまなデザインを選択できることなど。さらには工場生産なので品質が均一であること、施工性も高い素材です。
また、耐火性や耐震性にもある程度の性能を有しているため、総合力の高い外壁材といえます。
【窯業系サイディング】





【モルタル壁】





窯業系サイディングのメリット

すこしだけ前述しましたが、窯業系サイディングは
- 初期費用が安価に抑えられる
- タイル柄や木目調、レンガ調などさまざまなデザインを選択できる
- 工場生産なので品質が均一である
等があります。
それに加えて、窯業系サイディングは防火外壁材と呼ばれるほど、優れた耐火性能を持っています。
火に対する耐久度がどれくらいあるかを示す「耐火等級」において3級~4級を獲得しているサイディングが多く存在します。
3~4級の耐火等級とは、火による熱を遮ることのできる長さが、約40分~60分といったことを示しており、耐火性に優れている事が実証実験において証明されています。
・他のサイディング材と比べても安価である
(その他=金属サイディング・樹脂サイディング・木質サイディング)
・工場で制作する為、品質が均一
・窯業系サイディングは多種多様な色やデザイン性がある
・耐火性能も高い

窯業系サイディングのデメリット

いいことづくめにも思える総合力の高い窯業系サイディングにもデメリットがあります。そのデメリットについても解説していきます。
比較的早い段階でシーリングが劣化する
サイディングボードの繋ぎ目にはシーリング材が充填されています。
シーリングは経年劣化により、弾力性が低下し痩せやヒビ割れが発生します。
隙間が出来ると、そこから雨水が侵入し、ボードや建物のカビやコケ、腐食の原因になります。
そこから雨漏りの原因やサイディングそのものの欠落に繋がる可能性もあります。


シーリング工事の目安 1mあたり | 800円~1,000円 |

新築時の建物は、骨組み(木材)や各材料が新しい事や、建設時の環境によって、水分を多少なりとも含みます。
その為、経年とともに乾燥や建物の自重によって若干の動きがあるのです。
その影響を一番受けるのがシーリング材なのです。
結果、直射日光などの影響で弾力性が低下し痩せたシーリング材からひび割れ等が起こります。
熱を吸収しやすい
窯業サイディングは熱が溜まりやすく、真夏に直射日光を浴びる外壁面は、表面温度が60度以上になることがあります。
・直射日光を浴び続ける外壁面は、紫外線や表面温度の上下により、ほかの外壁面よりも劣化していく速度が速い。
表面の劣化が進むと水を吸収する
竣工から7~10年もすると、表面の防水性能が様々な理由によって落ちていきます。窯業サイディングの原料はセメント等なので、塗膜が剥がれてしまうと水を吸収します。
経年劣化により、ツヤが無くなり色あせなどが出てきますが、塗膜の剥がれが発生する前に塗り替えが必要です。


・シーリング材の劣化が早い
・熱を吸収しやすい
・表面の劣化が進むと水を吸収する
改修時期の目安

いよいよ基礎知識をみにつけていただいた所で、お伝えしたい部分の核心です。
外壁にちょっと違和感を感じた時に、今ご自宅の外壁はどの程度の劣化状況なのかを判断するのに必要な事を職人目線でお伝えしていきます。
外壁に起こりうる劣化症状一覧
・外壁目地の劣化(度合によっては深刻)
・外壁表面の剝れ・膨れ(深刻)
・下地材露出よる含水、室内漏水(緊急)

チョーキングとは


チョーキングとは、塗膜の成分(顔料や合成樹脂など)が劣化して塗膜表面に微粉が付着する現象で、「白亜化現象」とも呼ばれます。
外壁や屋根、玄関ドアなどで主に発生し、手を当てると白っぽい粉が付着したり、濡れたときに変色したりすることがあります。
チョーキングの原因は、紫外線や熱、風雨などの自然現象による塗膜の劣化です。特に日当たりの良い南側や西日が当たる面、1階よりも2階や3階の壁、直射日光の当たるバルコニーなどは紫外線の影響を受けやすく、チョーキングが発生しやすい箇所です。


以上ふまえて、下記の診断表を元にご自宅の判断材料になさってください。
外壁劣化診断表
チョーキング | シーリング材の劣化 | サイディングの表面劣化 | |
劣化度1 経過観察 | 手に塗膜がほんのり付着する (白亜化のはじまり) | 表面が若干パサパサしている気がする | 換気口下等に黒ずみが発生する。 (ホコリの累積) |
劣化度2 要注意 | 擦るとサイディングにホコリを拭いたような跡がつく (白亜化現象の悪化) | サイディングとの境界に ひび割れが発生する | 日の当たりにくい場所等に コケが付着する |
劣化度3 外壁塗装を検討 | コーキング材そのものが切れはじめている (建物によってはこの時点で入水・漏水します) | 一部表面が割れている、もしくは膨らんでいる気がする (シーリングの劣化状況が一因となります) | |
劣化度4 大至急改修が必要 | 部分的にシーリングが無くなり、 奥が見える | 表面が剥がれて 灰色の部分が見える | |
劣化度5 塗装工事が難しい。サイディング貼替や断熱材の交換が必要で高額になりやすい。 | いたる所の表面が剥がれてコケが生えている。 室内が湿気っぽく、カビが生えやすくなった気がする。 (断熱材が水分を含んでいる可能性大) |

ただし、表面がしっかりしているサイディングと比べると塗装工事後の美観や耐久度、劣化速度にまで差が出てきますし、漏水進行度によっては断熱材の交換・室内壁の改修が必要な場合もあります。
SNS上の窯業系サイディング劣化の声
外壁窯業系サイディングの経年劣化、、、ここまで歪むと目地からの漏水が気になる。石綿使っていた素材だから耐久性が高いものだった。石綿が禁止になり使わない現行製品の耐久性は持っても40年程度だろうか。 pic.twitter.com/MBAdSffCS4
— 職人の技を生かす建築士:寺澤秀忠 (@syotaku) June 21, 2020
窯業系サイディングの劣化です。
塗装時期が過ぎてくると塗膜が無くなりサイディング材が水分を吸い表面からボロボロと劣化していきます。
こうなると補修は出来ても元の状態に完璧に戻すとしたらサイディング材を交換するしか無いので定期的にメンテナンスをお勧めします!#さゆり工務店郡山支店 pic.twitter.com/0I6AC6sTAx
— さゆり工務店 郡山支店 三田 (@hrr2nj01VFJIogx) September 26, 2022
福島市にて
外壁塗装工事の現調です。
窯業系サイディングは劣化が進むと、張替えなくてはいけなくなってしまう為、定期的なメンテナンスが必要です。#さゆり工務店 #福島市 #リフォーム pic.twitter.com/eO9PS6kZ86— さゆり工務店 田村 (@Cd4ndulMcMw5iQ9) December 7, 2021
さいごに
いかがだったでしょうか。
ご自宅の外壁は大切な居住空間を守ったり、気持ちのいい毎日を過ごす為にも欠かせません。
来訪者のイメージにも関わってくる可能性もあります。
是非指標をご参考に適切なタイミングで資産価値も含めて維持していけたらいいですね!
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